カットオフ値を臨床で用いることは多いと思います。臨床でよく使う値なので理解を深めておきましょう。
目次
カットオフ値(cut off value)とは簡単にいうと「ある検査の陽性と陰性を分ける値のこと」です
このようなカットオフ値を用いるためにはまず、いい感じのカットオフ値を求めなければいけません。
例えば、カットオフ値を求めるために疾患とわかっている人と疾患でないとわかっている人をそれぞれ100人ずつ計測したとします。
疾患とわかっているの人と疾患でないとわかっているの人の検査値の間に完全に重なりがなければ、検査値の間にカットオフ値を取れば検査値から陽性と陰性を完全に分けることできますが、
実際に検査を行なって得られる値は疾患とわかっているの人と疾患でないとわかっているの人、それぞれの検査値の分布は重なり合っていることがほとんどです。
そのため、検査値をカットオフ値で陽性と陰性に分けた場合、
- 陽性はさらに真陽性と偽陽性
- 陰性はさらに真陰性と偽陰性
に分けることができます。真陽性、偽陽性、偽陰性、真陰性はそれぞれ以下のような意味をもちます。
- 真陽性:陽性と判断された者のうち、本当に陽性の者
- 偽陽性:陽性と判断された者のうち、本当は陰性の者
- 偽陰性:陰性と判断された者のうち、本当は陽性の者
- 真陰性:陰性と判断された者のうち、本当に陰性の者
この関係を表にまとめると以下のようになります。
この表から陽性的中率、陰性的中率、感度、特異度などを計測することができます。
陽性的中率:検査値が陽性であった人のうち本当に陽性であった人の割合
$$\frac{a}{a+b}\\$$
陰性的中率:検査値が陰性であった人のうち本当に陰性であった人の割合
$$\frac{d}{c+d}\\$$
感度(真陽性率):検査などで検出したい疾患などを有する者のうち検査で陽性であった者の割合
$$\frac{a}{a+c}\\$$
特異度:検査などで検出したい疾患などを有さない者のうち検査で陰性であった者の割合
$$\frac{d}{b+d}\\$$
下の図のようにカットオフ値を徐々に変化させたとき、得られる真陽性、偽陽性、偽陰性、真陰性の度数が変化していくのがわかると思います。
Receiver Operating Characteristic Curve(ROC曲線)はこのようにカットオフ値を徐々に変化させた時に得られる真陽性率(感度)を縦軸に、偽陽性率(1-特異度)を横軸にとったグラフです。
ROC曲線を用いると検査の性能評価をすることができます。
検査の分類精度の指数にArea under the curve(AOU)があります。AOUは下のグラフの青い部分のようにROC曲線とx軸と囲われた部分のことです。この部分の面積が大きければ大きいほど分類性能が良いことが言えます。
AOUの値 | 分類性能 |
---|---|
0.9〜1.0 | 高い |
0.7〜0.9 | 中等度 |
0.5〜0.7 | 低い |
次にROCからカットオフ値を求めていきましょう。ROCからカットオフ値を求めるためにはYouden indexを使います。Youden indexは特異度+特異度-1を計算して、その最大値をカットオフ値にする方法です。
こうすることで、偽陰性や偽陽性のことを考えて、数値的にちょうど良いところをカットオフ値にすることができます。
このYouden indexを使った方法はあくまでも数値的に一番適当なカットオフ値の決定方法です。実際に使うときは評価で見逃しを少なくするためにカットオフ値を調整する場合もあります。(篩の目を細か細かくしているイメージ)